Ⅲ1-2 効果的プログラムモデルの実施・普及ツールキットの作成

概要

効果的プログラムモデルの実施・普及ツールキットとは、対象となる実践プログラムに関心をもった事業所が、実施マニュアル等に記された通りにプログラムを実施して行くために必要な組織づくりのあり方や活動の進め方、実施上の工夫・進め方のヒントを記した文書類と、そのプログラムを進めて行くために有用な各種の用具類(ツール)を、パッケージとしてまとめたものである。アメリカ連邦厚生省SAMHSAが、EBPプログラムの実施・普及を進めるために開発したEBPツールキットプロジェクトが嚆矢となり、効果的プログラムモデルの実施・普及を進めていくためのアプローチとして注目を集めるようになった。
アメリカ連邦政府のEBPツールキットでは、表●●のように各EBPプログラムについて、効果的な普及モデルを作成して、そのモデルをさまざまの角度から記述する研修テキスト(ワークブック)やパンフレット、研修ビデオ(DVD)、紹介ビデオ(DVD)を用意する。また、利用者や家族・他の支援者、プログラムの実践家や指導者、精神保健行政担当者というそれぞれの立場の関係者が、当該プログラムに取り組んで、実施体制を構築するためのさまざまな工夫が文書としてまとめられている。

効果的プログラムモデルの実施・普及ツールキットは、効果的プログラムモデルに準拠して作成した「実施・普及モデル」(31-1-31)を、プログラムの実施・普及を進めるための標準モデルとする。そのプログラムモデルを、プログラム実施に関心を持つ事業所において、比較的容易に取り組めるための支援用具をこの課題プロセスを通して作成する。

図Ⅲ1-2-1には、「Ⅲ1-2 効果的プログラムモデルの実施・普及ツールキットの作成」の課題処理フローチャートを示した。「実施・普及ツールキットの作成」は、「実施・普及モデルのプログラム理論、効果的援助要素リスト、実施マニュアル、フィデリティ尺度」(31-1-31)を基盤にして作成する。先ほど紹介したアメリカ連邦政府のEBP実施・普及ツールキットなど、「関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムの実施・普及ツールキット」を参照し、「プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会」(31-2-23)、「研究者間のフォーカスグループ、検討会」(31-2-24)に基づいて、暫定版の実施・普及ツールキットを作成する。暫定版ツールキットを用いた「全国試行調査」を実施して、その内容をより実践現場に役立つ、効果的なツールキットに改善する。
実施・普及ツールキットの作成手順は、図Ⅲ1-2-2に示した。


【図Ⅲ1-2-1、および図Ⅲ1-2-2】

1) インプット

①効果的プログラムモデル(実施・普及モデル版)のプログラム理論、効果的援助要素リスト、実施マニュアル、フィデリティ尺度

効果的プログラムモデルのプログラム理論・効果的援助要素リスト、実施マニュアル、フィデリティ尺度(実施・普及モデル版)は、「Ⅲ1-1 効果的プログラムモデルの実践現場への移転、実施・普及モデルの作成」の3) アウトプット「①実施・普及モデルのプログラム理論、効果的援助要素リスト、実施マニュアル、フィデリティ尺度の作成、改訂(31-1-31)」に提示してある。

②関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムの実施・普及ツールキット

取り上げる実践プログラムと同様のプログラムゴールを持つ、EBPプログラム、ベストプラクティスプログラムの文献や関連資料を収集、分析する。可能な限り国際的な文献データベースでの体系的な文献収集が望ましい(Web of Science, Medlineなど)。
それらプログラムの実施・普及の方策、中でも実施・普及ツールキットに関して検討する。

③実施・普及ツールキットを用いた全国試行調査の実施

2) 検討方法

①実施・普及ツールキットを用いた全国試行調査の分析

②既存の類似制度分析

③プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会

④研究者間のフォーカスグループ、検討会

3) アウトプット

①効果的プログラムモデル(実施・普及モデル版)の実施・普及ツールキットの作成、改訂