Ⅲ1-1 効果的プログラムモデルの実践現場への移転、実施・普及モデルの作成

概要

前評価ステージ(Ⅱ. 効果的プログラムモデルへの発展評価ステージ)で構築された効果的プログラムモデルは、一般的には、効果モデルに強い関心を持ち、現状改善に意欲のある関係者の努力によって作成されるものである。次の評価段階では、このような効果モデルを、さまざまな地域条件やサービス環境の下にある、多くの地域や実践現場に移転して、幅広い多くの関係者が、無理なく、効果的にプログラムを実施することが求められる。そのためには、前評価ステージで構築して来た効果的プログラムモデルに必要な修正を加えることも必要になる。
具体的には、効果的プログラムモデルのプログラム理論、効果的援助要素リスト、実施マニュアル、フィデリティ尺度に対して必要な見直しを行う。多施設共同・効果モデル試行評価調査や、効果的プログラムモデル実施・普及の現場踏査調査、モニタリング調査の結果に基づいて、取り組み事例の評価結果の比較分析、困難・障壁分析を行うとともに、文献的な検討や関係者のフォーカスグループ、意見交換会、検討会によって実施・普及モデルを構築する。

Ⅲ1-1には、「Ⅲ1-1 効果的プログラムモデルの実践現場への移転、実施・普及モデルの作成」の課題処理フローチャートを示した。「実施・普及モデルのプログラム理論、効果的援助要素リスト、実施マニュアル、フィデリティ尺度」は、「Ⅲ1-1-1 効果的プログラムモデル(暫定最終版)のプログラム理論、効果的援助要素リスト、実施マニュアル、フィデリティ尺度」を土台にして、必要な修正・改善を加えて作成する。修正や改善を行うために、「多施設共同・効果モデル試行評価調査とその評価報告書」(31-1-13)や、このステージで新たに実施する「効果的プログラムモデル実施・普及の現場踏査調査、モニタリング調査」(31-1-14)の結果を活用する。効果的プログラムモデルの取り組み事例評価結果の比較分析、困難・障壁分析を行い、文献的な検討や関係者のフォーカスグループ、意見交換会、検討会によって実施・普及モデルを構築する。
作成された「実施・普及モデル」は、先ほど触れたように「Ⅲ1-2 効果的プログラムモデルの実施・普及ツールキットの作成」(31-2-01)の基盤となるとともに、「Ⅲ1-3 効果的プログラムモデルの制度化、制度モデルの作成」(31-3-01)に反映される。
実施・普及モデルの作成手順は、図Ⅲ1-1-2に示した。


【図Ⅲ1-1-1、および図Ⅲ1-1-2】

1)インプット

①効果的プログラムモデル(暫定最終版)のプログラム理論、効果的援助要素リスト、 実施マニュアル、フィデリティ尺度

効果的プログラムモデルのプログラム理論(暫定最終版)は、「Ⅱ4-1. 効果的プログラムモデルの構築」の3) アウトプット「①効果的プログラムモデルプログラム理論インパクト理論の作成、改訂(24-1-31)」および「②効果的プログラムモデルプログラム理論プロセス理論の作成、改訂(24-1-32)」に提示してある。
効果的プログラムモデルの効果的援助要素リスト(暫定最終版)は、同じく「③効果的プログラムモデル効果的援助要素リストの作成、改訂(24-1-33)」に、実施マニュアル(暫定最終版)は、同じく「④効果的プログラムモデルの実施マニュアルの作成、改訂(24-1-34)」に、フィデリティ尺度(暫定最終版)は、同じく「⑤効果的プログラムモデルのフィデリティ尺度の作成、改訂(24-1-35)」に提示してある。

②関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラム実施・普及モデルの文献調査結果

取り上げる実践プログラムと同様のプログラムゴールを持つ、EBPプログラム、ベストプラクティスプログラムの文献や関連資料を収集、分析する。可能な限り国際的な文献データベースでの体系的な文献収集が望ましい(Web of Science, Medlineなど)。
それらプログラムの実施上の困難・障壁の実態を確認するとともに、実施・普及の方策について検討する。

③多施設共同・効果モデル試行評価調査とその評価報告書

効果的プログラムモデルの実践現場への移転可能性の検証は、多施設共同・効果モデル試行評価調査の中で行われる。多施設共同評価調査に参加意思を表明した、比較的意識の高い施設・事業所において認められるプログラム実施状況と実施の困難・障壁の経験、およびそれに対応したアウトカム指標・尺度の得点状況が、この課題プロセスで取り上げられる。
多施設共同・効果モデル試行評価調査の実施については、「Ⅱ3-5. アウトカム評価とフィデリティ評価・効果的援助要素の関連性の検証、評価結果の活用」の1) インプット「①多施設共同・効果モデル試行評価調査の実施(23-5-11)」に、プログラム実施状況と実施の困難・障壁の評価を含む評価結果は、3) アウトプット「①多施設共同・効果モデル試行評価調査報告書(23-5-31)」に示されている。

④効果的プログラムモデル実施・普及の現場踏査調査、モニタリング調査

2)検討方法

①試行的プログラムの評価結果分析、比較分析、困難・障壁分析

②現場踏査調査・モニタリング調査の分析

③既存の類似制度分析

④プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会

多施設共同評価調査に参加した実施者・担当者、および利用者によるグループ討議は2段階で実施する。
1段階目については、本課題プロセス・1) インプットに示した①~⑤を総合的に検討して、効果的プログラムモデルの実践現場への移転のあり方、そして実践的適合モデルのあり方を、多施設共同評価調査に参加した実施者・担当者のグループ討議で検討する。多施設共同評価調査におけるプログラム実施の困難・障壁の評価とともに、プログラム実施状況についてフィデリティ評価得点別のアウトカム指標・尺度の状況も検討され、一定の成果を納めるためには、実践的制約の中で、どこまで効果的援助要素の実施が必要なのかについても検討する。
2段階目では、本課題プロセス・2) 検討方法「④研究者間のフォーカスグループ、検討会(31-1-24)」でまとめられた実践的適合モデルのプログラム理論(案)、効果的援助要素リスト(案)、実施マニュアル(案)、フィデリティ尺度(案)を、グループ討議で検討する。
検討課題が明確な場合は、その焦点となる課題を中心にフォーカスグループ面接を実施する。プロジェクト研究班事務局がファシリテーターとなりグループで、検討課題を中心に議論できるよう配慮する。
検討課題が十分にまとまっていない場合、検討課題があいまいな状況の場合は、ブレーンストーミング的なグループ発想技法を、ワークショップ形式で開催しても良い。
プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会の持ち方については、「Ⅱ2-1. 効果的援助要素リストの作成(22-1-01)」の「プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会(22-1-25)」に詳しく述べた。

⑤研究者間のフォーカスグループ、検討会

本課題プロセス・1) インプットに示した、①~⑤を総合的に検討し、かつ2) 検討方法の「①試行的プログラム実施者による意見交換会、フォーカスグループ(31-1-21)」「②試行的プログラム利用者による意見交換会、フォーカスグループ(31-1-22)」「③試行的プログラムの評価結果の分析、比較分析、困難・障壁分析(31-1-23)」を踏まえて、プロジェクト研究班事務局がたたき台となる実践的適合モデルのプログラム理論(案)、効果的援助要素リスト(案)、実施マニュアル(案)、フィデリティ尺度(案)を提示する。
実践的適合モデルの事務局たたき台案において、課題となる点については研究者間でフォーカスグループを開催する。課題があいまいな場合はブレーンストーミング的なグループ発想技法を用いても良い。ホワイトボードを使用したり、プロジェクターに映写しながら、グループで出された意見をグループ内でまとめると良い。

3)アウトプット

①実施・普及モデルのプログラム理論、効果的援助要素リスト、実施マニュアル、フィデリティ尺度の作成、改訂