Ⅱ1-2 プログラム理論の構築・再構築:プロセス理論(サービス利用計画)

概要


【図Ⅱ1-2-1、および図Ⅱ1-2-2】

1)インプット

①既存制度モデル・試行的事業モデルの実施要綱

既に実施されている既存・試行プログラムの場合、そのプログラムの実施要綱、実施マニュアルを入手し、分析する。国制度がある場合でも、都道府県、市町村の要綱がある場合があり、それらについても検討する。特に、その実践プログラムの対象者設定、事業内容、サービス提供方法に関する記述に注目し、検討する。

②関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムの知見、文献調査

取り上げる実践プログラムと同様のプログラムゴールを持つ、EBPプログラム、ベストプラクティスプログラムの文献や関連資料を収集、分析する。可能な限り国際的な文献データベースでの体系的な文献収集が望ましい(Web of Science, Medlineなど)。
それらプログラムのプロセス理論が記載されていれば参考にするとともに、プログラム実施方法、サービス提供方法に留意して検討する。

③プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会

④グッドプラクティス(GP)事例の現場踏査調査

1. GP事例の現場踏査調査の設定

既存・試行プログラムが実施されている場合は、GP事例に対する現場踏査調査を実施する。GP事例は、「プログラム関係者、利害関係者からの聞き取り調査(12-1-11)」や、「既存制度モデル・試行的事業モデルの実情把握調査(12-1-13)」に基づく、「グッドプラクティス(GP)事例報告書(12-1-32)」などによって、10事例~20事例程度を選定する。
現場踏査調査の設定方法は、「GP事例の現場踏査調査進め方ガイドライン(T001)」に記載してある。

2. GP事例の現場踏査調査のインタビューガイド、面接調査票の作成

全般的な作成方法は、「GP事例の現場踏査調査半構造化面接調査票、インタビューガイドの作成方法ガイドライン(T002)」に記載。面接票・インタビューガイドの実例は、(S001)(S002)などを参照。

「プロセス理論サービス利用計画の作成(予備的サービス利用計画)(21-2-31)(21-2-32)」に基づいて質問項目を設定する。「予備的サービス利用計画」は、「既存制度モデル・試行的事業モデルの実施要綱(21-2-11)」、「関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムの知見、文献調査結果(21-2-12)」、「プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会(21-2-13)」などに基づいて作成する。

サービス利用計画に関わる質問内容は、以下の項目を参考に設定する。
○プログラム標的集団へのサービス提供

  • 貴事業が対象とする標的集団へのサービス提供
  • プログラムの広報・啓発活動

○援助プロセスごとのゴールとサービス提供上の工夫・配慮

  • 利用者との関係作り
  • ゴールに向けての動機付け
  • ゴールに向けた準備訓練
  • アセスメントと支援計画の作成
  • ゴールに向けた支援上の配慮
  • 支援における生活の質の向上

作成した「予備的サービス利用計画(21-2-31)(21-2-32)」において重視し、かつ既存・試行プログラムでは、必ずしも位置づけが明確ではないプログラム要素(就労移行支援プログラムにおける「早期の実習導入」「早期のトライアル雇用・短時間雇用の導入」「就労継続・職場定着への支援」など、退院促進・地域定着支援プログラムにおける「迅速なプログラム導入」「早期の退院実現」「地域生活の維持・継続」「退院支援機関の継続サポート」など)については、GP事例の関係者から、その位置づけに対する意見を尋ねる。
既存・試行プログラムで位置づけが明確ではないが、予備的プロセス理論サービス利用計画において設定するプログラム要素(「効果的援助要素」)は、国際的な水準で先行文献に基づいて設定されるものや、理論的な検討など、「関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムの知見、文献調査結果(21-2-12)」に基づいて設定されるプログラム要素(「効果的援助要素」である。

3. GP事例の現場踏査調査時の意見交換

現場踏査調査時には、面接票・インタビューガイドに設定された質問(T001)だけでなく、GP事例において設定しているプログラムゴールとの関係で行われる創意・工夫、配慮、改善のための努力、利用者に対するゴールに向けての動機付け、準備訓練の状況、既存・試行プログラムでは必ずしも位置づけが明確ではないプログラム要素に対する意見など、GP事例の実例に即して意見交換を行う。

4. GP事例の現場踏査調査事例報告書の作成

GP事例の現場踏査調査から戻ったら、できるだけ速やかに事例報告書をまとめる。
全般的な事例報告書の内容と作成方法は、「GP事例の現場踏査調査事例報告書の作成方法ガイドライン(T003)」に記載。

サービス利用計画に関連する事例報告書項目としては、プログラム標的集団へのサービス提供、援助プロセスごとのゴールとサービス提供上の工夫・配慮、特に利用者との関係づくり、動機付け、ゴールに向けた準備訓練など、事例考察・コメントとして、特徴的な取り組み・事業所のストレングス、より効果的な取り組みになるための課題、などがある。

⑤プログラムゴールと標的集団設定に関する報告書

取り上げる実践プログラムのプログラムゴールと標的集団設定に関する報告書の記述は、「Ⅰ1-1. ニーズ把握とプログラムゴール・標的集団の設定」の「プログラムゴールと標的集団設定に関する報告書(11-1-32)」にある。

⑥プログラム実施状況報告書、モデル浸透度、体系的実施状況報告書

取り上げる実践プログラムの実施状況、モデル浸透度、体系的実施状況に関する記述は、「Ⅰ2-1. 既存・試行プログラムの現状把握」の「効果的モデル構築のためのプログラム実施状況報告書」(12-1-31)」にある。

2) 検討方法

①プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)検討の手引き

1. プログラム理論、プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)について

プログラム理論とは、社会プログラムがどのように効果をもたらすのか、どのような要素が効果に影響するかに対して明確な見通しを与える因果関連やプログラム要素に関する一連の仮説群である。プログラムの効果に関するインパクト理論と、プログラム要素に関するプロセス理論からなる。個別プログラムに対してプログラム理論をよく吟味することにより、より良いアウトカムを生み出す、優れた実践プログラムの構築が期待される。
CD-TEP評価アプローチ法では、Rossiら(2004)のプログラム理論の枠組み、すなわち直接的に利用者との接触がある対人サービスプログラムに対する、プログラムと利用者との相互作用に重点を置いた枠組み(図A)に準拠して、その作成方法を定式化した。
プロセス理論サービス利用計画は、サービス利用の標的集団(ターゲット)を同定して、その人たちにどのようにプログラムを提供し、より良い効果をもたらしたら良いかを、援助サービス機能の面から示したプログラムの設計図であり、基本的なプログラム機能の指針である。このうち、サービス利用計画Ⅰ型とは、課題となるプログラムゴールの実現と問題解決のために、プログラムの導入、実施、問題の解決・改善、終結・フォローアップが一連の時系列的プロセスで提供されるサービス機能の指針である。一方、サービス利用計画Ⅱ型は、生活施設など利用者が生活する場で、課題となるプログラムゴールの実現と問題解決のために、継続的に提供されるサービス機能の指針である。

2. プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)作成・発展の手順

プロセス理論を含むプログラム理論の作成は、効果的プログラムモデルを発展・形成させるプロセスとともに進める。効果的プログラムモデルの設計図であるプログラム理論は、CD-TEP評価アプローチ法の図Bに示したように、らせん階段状に常により良い効果的なプログラムに発展・進化することが期待されている。ここでは、便宜的に「予備的プログラム理論(主に文献調査や関係者からの聞き取りなどによって暫定的に設定)」「第1次プログラム理論(実践現場の創意・工夫、改善点の反映を踏まえて構築)」「第2次プログラム理論(「効果的援助要素」の量的分析を踏まえて構築)」「第3次プログラム理論(プログラム関係者・利害関係者の合意形成、普及モデルの検討を通して形成)」(21-2-31)を設定する。
「予備的プロセス理論サービス利用計画」(「予備的プログラム理論」)は、主に文献調査や関係者からの聞き取りなどによって暫定的に設定したプログラム理論である。GP事例に対する現場踏査調査を実施する際の面接票作成(T002)などのために暫定的に作成する。
「第1次プロセス理論サービス利用計画」(「第1次プログラム理論」)は、「グッドプラクティス(GP)事例の現場踏査調査(21-2-14)」を中心に把握される、実践現場の創意・工夫、改善点の反映を踏まえて構築される。
「第2次プロセス理論サービス利用計画」(「第2次プログラム理論」)は、「効果的援助要素」の量的評価調査の分析結果・エビデンス(23-4-25)を踏まえて構築される。
これに対して、「第3次プロセス理論サービス利用計画」(「第3次プログラム理論」)は、当面の最終プログラム理論(24-1-31)であり、プログラム関係者や利害関係者の検討会(24-1-21、21-1-22)の合意形成を踏まえて、さらに、普及モデルの検討(???31-2-21)を通して形成される。

3. 予備的プロセス理論サービス利用計画の作成

「予備的プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)(21-2-31)」は、「既存制度モデル・試行的事業モデルの実施要綱(21-1-11)」、「関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムの知見、文献調査結果(21-1-12)」、「プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会(21-1-13)」、さらには、「ニーズアセスメントの結果報告書(21-1-14)」「プログラムゴールと標的集団設定に関する報告書(21-1-15)」などに基づいて作成する。「予備的プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)」は、GP事例に対する現場踏査調査を実施する際の面接票作成(T002)などのために暫定的に作成する。

4. 第1次、第2次、第3次プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)の作成

「予備的プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)(21-2-31)」に基づいて、「GP事例の現場踏査調査半構造化面接票、インタビューガイド(T002)」が作成され、現場踏査調査などによって、実践現場の創意・工夫、改善点など反映が反映されて第1次プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)が作成される。
「第1次プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)(21-2-31)」を含む「第1次プログラム理論」は、一定の完成度を備えたプログラム理論である。このプロセス理論サービス利用計画に依拠して作成される「効果的援助要素リスト(22-1-31)」「効果的プログラムモデルの実施マニュアル(22-2-31)」「効果的プログラムモデルのフィデリティ尺度(23-2-31)」を用いて行われる、多施設共同による試行的評価調査(23-4-14) の結果に基づいて、「効果的援助要素」の量的分析などが行われ、「第2次プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)(21-2-31)」を含む「第2次プログラム理論」が作成される。
この改訂に当たっては、試行的評価調査のためのプログラムスタッフ研修会(23-4-17)や「フィデリティモニタリングにおける意見交換(22-1-142)」による「プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会(21-1-24)」が繰り返し行われる。この中で、「効果的援助要素」の量的分析だけでなく、「効果的プログラムモデル」を実際に実施して、実態に即した形で実践現場からの創意・工夫、改善点などが「第2次プログラム理論」に反映される。
「第3次プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)(21-2-31)」を含む「第3次プログラム理論」は、プログラム関係者や利害関係者の検討会(24-1-21、21-1-22)の合意形成を踏まえて、普及モデルの検討(???31-2-21)を通して形成される。

5. プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)作成で重視すること

プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)の作成については、まずインパクト理論に基づいて、それを実現するプロセス理論サービス利用計画を考慮する。その上で、プロセス理論組織計画を作成する。なお、プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)では、インパクト理論の作成後、組織計画を検討した後に、サービス利用計画を作成することが有効である場合がある(21-2-22)。サービス利用計画(Ⅰ型)の作成でも考慮する必要がある。

サービス利用計画(Ⅰ型)の作成に当たって、以下のことを重視する。
すなわち、①サービス利用計画は、プログラムの入口から出口までのフローチャートとして設定する、②サービス利用計画の入口部分では、標的集団への積極的な広報活動、アウトリーチ活動、積極的な関係づくりを行うこと、③利用者の意向を尊重した、個別ニーズに応じた支援計画を作成すること、④利用者の希望とモティベーションに応じた迅速なサービス提供と目標実現をめざすこと、⑤サービス利用計画の出口部分では、必要に応じてニーズが継続する限り継続的な支援の提供の位置づけること、⑥利用者本人を身近に支援する環境(身近な支援環境;家族・地域社会・支援スタッフなど)に対するサービス機能と、その支援環境から利用者本人に対する支援機能を位置づけることなどを共通要素とする。
作成した「プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)(予備的、1次、2次、3次)(21-2-31)」は、「関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムとの比較分析(21-2-23)」「組織的キャパシティ分析(21-2-24)」を行うとともに、「研究者間のフォーカスグループ、検討会(21-2-25)」「プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会(21-2-26)」を繰り返しながら、より精緻化された、関係者の合意が得られて、より実践的な理論に発展していく。

6. プログラムの入口から出口までのフローチャート

サービス利用計画Ⅰ型は、課題となるプログラムゴールの実現と問題解決のために、プログラムの導入、実施、問題の解決・改善、終結が一連の時系列的プロセスで提供されるプログラムに適用されるため、サービス利用計画は、プログラムの入口から出口までに至るフローチャートとして提示する。
フローチャートの中心には、利用者本人に対するサービス提供の流れを、導入、実施、問題の解決・改善、終結・フォローアップに沿って示す。終結・フォローアップに関しては、ニーズが継続する限り継続的な支援の提供することを重視するため、継続的支援とフォローアップも明確に位置づける。また、利用者本人を身近に支援する環境(身近な支援環境)に対するサービス機能を並行して表示する。一連の時系列的プロセスは、利用者の希望とモティベーションに応じた迅速なサービス提供と目標実現をめざす。

7. プログラムの入口におけるサービスの重視~広報、アウトリーチ、積極的な関係づくり~

サービス利用計画Ⅰ型は、一連の時系列的プロセスで提供されるプログラムのために用意されたものであるため、常にニーズのあるプログラム標的集団を適切に把握し、積極的に働き掛けてプログラムの利用を促す必要がある。
まずニーズをもつプログラム標的集団を適切にアセスメントし、その集団に相応しい方法で積極的に広告活動を提供する。福祉対象者の場合は、必要に積極的なアウトリーチ活動が求められることがある。プログラムの利用を考慮するものに積極的な関係づくりのための働きかけを行う。これらプログラムの入口における積極的なサービス提供は、福祉実践プログラムに共通するプログラム要素であろう。

8. 利用者本人の個別ニーズに応じた、迅速なサービス提供

プログラムのサービス提供が開始される当初に、速やかに利用者の意向を尊重した、利用者の個別ニーズに応じた支援計画を作成し、実施する。同時に利用者本人の希望とモティベーションに応じた迅速なサービス提供と目標実現をめざす。迅速なサービス提供に関しては、あくまでも利用者のペースに合わせた迅速さが求められる。同時に、迅速に次のステップに進むことに伴う「失敗」の危険性が付きまとうことにも配慮が必要である。「失敗」から多くのことを学ぶとともに、再チャレンジはどの段階からでも可能であることを明示して、利用者、関係者の共通認識にする。以上は、福祉実践プログラムに共通するプログラム要素であろう。

9. 継続的な支援の提供とフォローアップ

サービス利用計画Ⅰ型は、一連の時系列的プロセスで提供されるプログラムのために用意されたものであり、プログラムの終結やフォローアップが考慮されている。しかし、プログラムの利用者が、福祉実践プログラムの対象者であることを考慮すると、必要に応じてニーズが継続する限りは、継続的な支援の提供の位置づけること、そして適切なフォローアップを提供することを考慮する必要がある。
同時に、専門的なプログラムサービスの提供が終了した後も、身近に支援する環境(身近な支援環境)が、必要に応じて継続的に支援を提供できるように環境調整を行うことも求められている。
継続的な支援は、ニーズが存在する限り権利として保障する必要がある。同時に、利用者本人の利用希望がなくなった段階で、継続支援を拒否する権利も保障する。そのためにも、継続支援の終了ルールを明確化をして、利用者本人に提示し、同意を得ておく必要がある。

10. 身近に支援する環境をプロセス理論サービス利用計画に位置づける

福祉実践プログラムでは、利用者本人を身近に支援する環境(身近な支援環境;家族・地域社会・支援スタッフなど)との相互作用を重視しながらプログラムを実施する必要がある。そのため、これら対象利用者を身近に支援する環境に対するサービス機能は、プロセス理論サービス利用計画に明確に位置づけることが求められる。

②プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)検討の手引き

1. プログラム理論、プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)について

プログラム理論とは、社会プログラムがどのように効果をもたらすのか、どのような要素が効果に影響するかに対して明確な見通しを与える因果関連やプログラム要素に関する一連の仮説群である。プログラムの効果に関するインパクト理論と、プログラム要素に関するプロセス理論からなる。個別プログラムに対してプログラム理論をよく吟味することにより、より良いアウトカムを生み出す、優れた実践プログラムの構築が期待される。
CD-TEP評価アプローチ法では、Rossiら(2004)のプログラム理論の枠組み、すなわち直接的に利用者との接触がある対人サービスプログラムに対する、プログラムと利用者との相互作用に重点を置いた枠組み(図A)に準拠して、その作成方法を定式化した。
プロセス理論サービス利用計画は、サービス利用の標的集団(ターゲット)を同定して、その人たちにどのようにプログラムを提供し、より良い効果をもたらしたら良いかを、援助サービス機能の面から示したプログラムの設計図であり、基本的なプログラム機能の指針である。このうち、サービス利用計画Ⅱ型は、生活施設など利用者が生活する場で、課題となるプログラムゴールの実現と問題解決のために、継続的に提供されるサービス機能の指針である。これに対して、サービス利用計画Ⅰ型とは、課題となるプログラムゴールの実現と問題解決のために、プログラムの導入、実施、問題の解決・改善、終結が一連の時系列的プロセスで提供されるサービス機能の指針である。

2. プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)作成の手順

プロセス理論を含むプログラム理論の作成は、効果的プログラムモデルを発展・形成させるプロセスとともに進める。効果的プログラムモデルの設計図であるプログラム理論は、CD-TEP評価アプローチ法の図Bに示したように、らせん階段状に常により良い効果的なプログラムに発展・進化することが期待されている。ここでは、便宜的に「予備的プログラム理論(主に文献調査や関係者からの聞き取りなどによって暫定的に設定)」「第1次プログラム理論(実践現場の創意・工夫、改善点の反映を踏まえて構築)」「第2次プログラム理論(「効果的援助要素」の量的分析を踏まえて構築)」「第3次プログラム理論(プログラム関係者・利害関係者の合意形成、普及モデルの検討を通して形成)」(21-2-32)を設定する。
「予備的プロセス理論サービス利用計画」(「予備的プログラム理論」)は、主に文献調査や関係者からの聞き取りなどによって暫定的に設定したプログラム理論である。GP事例に対する現場踏査調査を実施する際の面接票作成(T002)などのために暫定的に作成する。
「第1次プロセス理論サービス利用計画」(「第1次プログラム理論」)は、「グッドプラクティス(GP)事例の現場踏査調査(21-2-14)」を中心に把握される、実践現場の創意・工夫、改善点の反映を踏まえて構築される。
「第2次プロセス理論サービス利用計画」(「第2次プログラム理論」)は、「効果的援助要素」の量的評価調査の分析結果・エビデンス(23-4-25)を踏まえて構築される。
これに対して、「第3次プロセス理論サービス利用計画」(「第3次プログラム理論」)は、当面の最終プログラム理論(24-1-31)であり、プログラム関係者や利害関係者の検討会(24-1-21、21-1-22)の合意形成を踏まえて、さらに、普及モデルの検討(???31-2-21)を通して形成される。

3. 予備的プロセス理論サービス利用計画の作成

「予備的プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)(21-2-32)」は、「既存制度モデル・試行的事業モデルの実施要綱(21-1-11)」、「関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムの知見、文献調査結果(21-1-12)」、「プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会(21-1-13)」、さらには、「ニーズアセスメントの結果報告書(21-1-14)」「プログラムゴールと標的集団設定に関する報告書(21-1-15)」などに基づいて作成する。「予備的プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)」は、GP事例に対する現場踏査調査を実施する際の面接票作成(T002)などのために暫定的に作成する。

4. 第1次、第2次、第3次プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)の作成

「予備的プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)(21-2-32)」に基づいて、「GP事例の現場踏査調査半構造化面接票、インタビューガイド(T002)」が作成され、現場踏査調査などによって、実践現場の創意・工夫、改善点など反映が反映されて第1次プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)が作成される。
「第1次プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)(21-2-32)」を含む「第1次プログラム理論」は、一定の完成度を備えたプログラム理論である。このプロセス理論サービス利用計画に依拠して作成される「効果的援助要素リスト(22-1-31)」「効果的プログラムモデルの実施マニュアル(22-2-31)」「効果的プログラムモデルのフィデリティ尺度(23-2-31)」を用いて行われる、多施設共同による試行的評価調査(23-4-14) の結果に基づいて、「効果的援助要素」の量的分析などが行われ、「第2次プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)(21-2-32)」を含む「第2次プログラム理論」が作成される。
この改訂に当たっては、試行的評価調査のためのプログラムスタッフ研修会(23-4-17)や「フィデリティモニタリングにおける意見交換(22-1-142)」による「プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会(21-1-24)」が繰り返し行われる。この中で、「効果的援助要素」の量的分析だけでなく、「効果的プログラムモデル」を実際に実施して、実態に即した形で実践現場からの創意・工夫、改善点などが「第2次プログラム理論」に反映される。
「第3次プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)(21-2-32)」を含む「第3次プログラム理論」は、プログラム関係者や利害関係者の検討会(24-1-21、21-1-22)の合意形成を踏まえて、普及モデルの検討(???31-2-21)を通して形成される。

5. プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)作成で重視すること

プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)の作成については、まずインパクト理論に基づいて、それを実現するプロセス理論組織計画を考慮する。その上で、プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)を作成する。なお、プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)では、インパクト理論の作成後、サービス利用計画を検討した後に、組織計画を作成することが有効と考えている(21-2-21)。サービス利用計画(Ⅱ型)の作成でも考慮する必要がある。

サービス利用計画(Ⅱ型)の作成に当たって、以下のことを重視する。すなわち、

  1. 利用者本人の問題解決のために直接的に役割を果たすコアプログラム(児童養護施設における愛着臨床プログラム、高齢者施設における環境作りプログラムなど)と、施設スタッフなど利用者本人の身近な支援環境へ働き掛ける側面的支援プログラムを、それぞれ別個に考慮する、
  2. 身近な支援環境(入所施設のスタッフ環境等)へ働き掛ける側面的支援プログラムを、2~3年から5~6年の比較的長い時間をかけて系統的に実施する、
  3. 身近な支援環境(入所施設のスタッフ環境等)はコアプログラムを提供するプログラム提供主体であるとともに、スタッフ研修やリーダー研修、コンサルテーション、その他の支援(側面的支援プログラム)を受ける支援客体でもある、
  4. 身近な支援環境(入所施設のスタッフ環境等)には、コアプログラムの実施に関して、リーダー的役割を果たすスタッフ、日常的に直接的ケアサービスに従事するスタッフ、研修や教育の担当スタッフ、プログラム実施の管理的役割を担うスタッフなどから構成されるプログラム実施内部組織が存在する、
  5. 身近な支援環境(入所施設のスタッフ環境等)に対して、比較的長い時間をかけて系統的に側面的支援プログラム(リーダー研修、スタッフ研修、コンサルテーション、実施ツールキットなどシステム的実施用具類の提供など)を実施する外部の技術支援組織(技術支援センター)が存在する、
  6. コアプログラムを実施する内部組織と、側面的支援プログラムを実施する外部技術支援組織のそれぞれのセクターごとに、提供するそれぞれのプログラムサービス機能(プログラム要素)が存在する、
  7. コアプログラムを実施する内部組織の支援機能(プログラム要素)には、コアプログラムの利用者本人が持つニーズに気づきとその把握のためのアセスメント法、日常的にコアプログラムを提供するためのピアコンサルテーション、事例検討会、リーダーが主体的に行うスタッフ研修会、系統的な支援計画の立案、系統的な支援計画の見直し、スタッフ自らのケア内容やケア満足度、共感疲労などに関する気づきに関するアセスメントなどがある、
  8. 外部の技術支援組織(技術支援センター)は、身近な支援環境(入所施設のスタッフ環境等)に対して、2~3年から5~6年の比較的長い時間をかけて、リーダー研修、スタッフ研修、コンサルテーション、実施ツールキットなどシステム的実施用具類の提供などの側面的支援プログラムを系統的に実施する、
  9. 外部の技術支援組織(技術支援センター)は、身近な支援環境(入所施設のスタッフ環境等)と、最初は、(a)コアプログラム実施のための関係づくりと組織づくりを行い、(b)コアプログラム実施のための継続的支援を提供し、(c)身近な支援環境(入所施設のスタッフ環境等)がコアプログラムを自立的に行えるように移行支援を行い、さらに、(d)身近な支援環境(入所施設のスタッフ環境等)がコアプログラムを自立的に行えるようなったら、フォローアップとモニタリング支援を行う、
  10. 以上のようにプログラム実施組織と密接に関連した、コアプログラムと側面的支援プログラムのサービス利用計画は、プログラム実施組織ごと(外部技術支援組織といくつかの内部実施組織ごと)に整理して、かつ内部組織がコアプログラムを主体的に実施する時期ごとに[(a)~(d)]時系列的に整理して、サービス利用計画とする。

作成した「プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)(予備的、1次、2次、3次)(21-2-32)」は、「関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムとの比較分析(21-2-23)」「組織的キャパシティ分析(21-2-24)」を行うとともに、「研究者間のフォーカスグループ、検討会(21-2-25)」「プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会(21-2-26)」を繰り返しながら、より精緻化された、関係者の合意が得られて、より実践的な理論に発展していく。

③関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムとの比較分析

1. 分析・検討の方針

社会プログラムの標的集団は、対象となる社会プログラム・福祉実践プログラムが解決をめざす社会問題を抱える中心的な集団(人々)である。プログラムゴールの分析と、標的集団の分析は、いずれもニーズアセスメントの結果、社会問題解決のために必要な社会プログラムが、ある程度明らかになった段階で実施する。
プログラム標的集団の設定は、社会プログラムの導入が考慮される社会問題が、①どのような社会的背景や要因によって生み出されているのか、②社会問題を生み出す背景や要因のどこに、どのように働き掛ければ(介入すれば)、問題の解決に結び付くのか、を明らかにし、③そのために導入が求められる社会プログラムはどのようなタイプのものであるのかを明らかにする。その上で、そのプログラムの導入によって、④もっとも効果が期待される標的集団はどのような集団か、⑤標的集団の範囲、⑥置かれている状況、⑦問題の程度、⑧どのようにその標的集団にサービスを届ければ良いのか、キーインフォーマント、その他利害関係者、既存統計・機関記録等の分析結果、ニーズ調査分析結果ごとに比較して、明確にする。

2. 標的集団分析表

ニーズ把握・調査・分析を行った、キーインフォーマント、その他利害関係者、既存統計・機関記録等の分析結果、ニーズ調査分析結果ごとに、得られた情報をマトリックス形式の標的集団分析表にまとめて記録する(表Ⅰ1-1-3??参照)。
それぞれの情報源から得られた情報を分析表の1行に記し、前項分析・検討の方針に示した①~⑧の項目を記載し、比較検討する。
キーインフォーマントやその他利害関係者に対する聞き取り調査結果は、独立した別表にまとめて分析しても良い。その分析結果をまとめて、既存統計・機関記録等の分析結果、ニーズ調査分析結果などとともに、別の標的集団分析表に整理しても良い。
標的集団の設定に当たっては、ニーズアセスメント分析(11-1-21)で明らかにされたプログラム理論・サービス利用計画(21-2-31)(21-2-32)に類似の要因図モデルを参照する。

3. 標的集団分析の留意点

社会問題の定義や社会プログラムの標的集団設定は、最終的には政治プロセスであって、状況固有の特徴から自動的に導かれるものではない(Rossiら、2004)。特にサービスコストの高いプログラムについては、適用基準(eligibility criteria)が厳しく設定される可能性がある。そのため、政治過程に関わらない実践家、研究者は、可能な限り科学的で、論理的で、説得力のある標的集団分析の結果を示すことが求められている。

④組織的キャパシティ分析

⑤研究者間のフォーカスグループ、検討会

「1) インプット」に示した、①~⑥を総合的に検討し、かつ「2) 検討方法」の①プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)検討、②プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)検討、③関連するEBPプログラム、ベストプラクティスプログラムとの比較分析を踏まえて(研究班の検討会で議論)、プロジェクト研究班事務局がたたき台となるプロセス理論サービス利用計画を提示する。
プロセス理論サービス利用計画の事務局たたき台案において、課題となる点については研究者間でフォーカスグループを開催する。課題があいまいな場合はブレーンストーミング的なグループ発想技法を用いても良い。ホワイトボードを使用したり、プロジェクターに映写しながら、グループで出された意見をグループ内でまとめると良い。

⑥プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会

研究者間のフォーカスグループ、検討会でまとめられたプロセス理論サービス利用計画案を、プログラム関係実践家、利用者、家族、行政関係者などの利害関係者に集まって頂き、グループ討論を行い、その内容を検討する。プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会の実施方法は、「Ⅱ1-1. プログラム理論の構築・再構築:インパクト理論」の「1) インプット③プログラム関係実践家・利用者とのフォーカスグループ、意見交換会(21-1-13)」に示した。
利害関係者のグループは、プロセス理論サービス利用計画の作成当初は、プログラム関係実践家単独、利用者単独などで開催しても良い。最終的には社会的合意が形成されるインパクト理論を作成するために、多様な利害関係者からなるフォーカスグループ、意見交換会を開催して合意形成をはかることが望ましい。

3)アウトプット

①プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)および改訂版(予備的、1次、2次、3次)の作成

1. プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)作成・発展の手順

プロセス理論サービス利用計画作成の手順は、「プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)検討の手引き(21-2-21 )」に記載した。プログラム理論は、効果的プログラムモデルが発展するプロセスとともに、より精緻化され、関係者の合意が得られたより実践的な理論に発展する(CD-TEP評価アプローチ法、CD-TEP評価アプローチ法の図B)。ここでは、便宜的に「予備的プログラム理論(主に文献調査や関係者からの聞き取りなどによって暫定的に設定)」「第1次プログラム理論(実践現場の創意・工夫、改善点の反映を踏まえて構築)」「第2次プログラム理論(「効果的援助要素」の量的分析を踏まえて構築)」「第3次プログラム理論(プログラム関係者・利害関係者の合意形成、普及モデルの検討を通して形成)」(21-2-31)を設定する。

2. 可視化され、理解しやすいプロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)の作成

プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)は、導入される社会プログラムが取り組もうとする支援機能、プログラム要素を明確に示す重要なプログラムの「設計図」である。可能な限り、実践現場や利用者・家族にも理解しやすいよう、可視化されたチャートとして作成する必要がある。
プロセス理論サービス利用計画(Ⅰ型)のサンプル図(チャート)は、(S004)に示す。
通常は、時系列的プロセスでプログラムのサービスが提供されるために、サービス利用計画チャートの上から下に向かって、プログラムの入口から出口までの流れが、一連のフローチャート形式で示される。
サービス利用者本人に対するコアプログラムの流れを、サービス利用計画図(チャート)の中央に配置する。プログラムの入口から出口まで、導入、実施、問題の解決・改善、終結・フォローアップに沿って提示する。終結・フォローアップに関しては、ニーズが継続する限り継続的な支援の提供することを重視するため、継続的支援とフォローアップの要素もサービス利用計画チャート上に明確に位置づける。
利用者本人を身近に支援する環境(身近な支援環境)へ働き掛ける側面的支援プログラムの機能(援助要素)も、サービス利用計画チャート上に位置づける。通常は、サービス利用者本人に対するコアプログラムの流れの左右に、側面的支援プログラムの要素を配置する。複数の支援環境を示すこともできる(退院促進・地域定着支援プログラムの「地域への働き掛け」と「病院・病棟への働き掛け」、就労移行支援プログラムの「雇用先への働き掛け」「生活支援資源への働き掛け」など)。
表示するのは、利用者本人を身近に支援する環境(身近な支援環境)に対して、プログラム主体が提供するサービス機能である。同時に、その支援環境から利用者本人に対する支援機能を位置づけて表示する。

②プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)および改訂版(予備的、1次、2次、3次)の作成

1. プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)作成・発展の手順

プロセス理論サービス利用計画作成の手順は、「プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)検討の手引き(21-2-22 )」に記載した。プログラム理論は、効果的プログラムモデルが発展するプロセスとともに、より精緻化され、関係者の合意が得られたより実践的な理論に発展する(CD-TEP評価アプローチ法、CD-TEP評価アプローチ法の図B)。ここでは、便宜的に「予備的プログラム理論(主に文献調査や関係者からの聞き取りなどによって暫定的に設定)」「第1次プログラム理論(実践現場の創意・工夫、改善点の反映を踏まえて構築)」「第2次プログラム理論(「効果的援助要素」の量的分析を踏まえて構築)」「第3次プログラム理論(プログラム関係者・利害関係者の合意形成、普及モデルの検討を通して形成)」(21-2-32)を設定する。

2. 可視化され、理解しやすいプロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)の作成

プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)は、導入される社会プログラムが取り組もうとする支援機能、プログラム要素を明確に示す重要なプログラムの「設計図」である。可能な限り、実践現場や利用者・家族にも理解しやすいよう、可視化されたチャートとして作成する必要がある。
プロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)のサンプル図(チャート)は、(S005)に示す。
入所生活施設など利用者が生活する場で、課題となるプログラムゴールの実現と問題解決のために、継続的に提供されるプログラムのサービス機能を示したプロセス理論サービス利用計画(Ⅱ型)は、プログラム実施組織と密接に関連して設定される。
プログラム実施組織は、利用者本人の問題解決のために直接的に役割を果たすコアプログラム(児童養護施設における愛着臨床プログラム、高齢者施設における環境作りプログラムなど)を実施する内部(入所施設等)の複数のプログラム実施組織(リーダー的スタッフ、直接的ケアスタッフ、研修・教育担当スタッフ、管理的スタッフ等)と、側面的支援プログラムを実施する外部の技術支援組織(技術支援センター)がある。それぞれの部門(セクター)が、コアプログラム、側面的支援プログラムをどのように実施し、関わって行くのかを、時系列的に上から下に配置していく。
時系列的な時期分類については、内部組織がコアプログラムを主体的に実施する時期ごとに、(a)コアプログラム実施のための関係づくりと組織づくり期、(b)コアプログラム実施のための継続的支援期、(c)内部組織がコアプログラムを自立的に行うための移行支援期、(d)内部組織がコアプログラムを自立的に行うフォローアップとモニタリング期、に設定し、それぞれの時期のプログラム実施機能を、組織別に整理して示す。

③プロセス理論サービス利用計画の解説文作成の手引き

1. プロセス理論サービス利用計画解説文の位置づけ

プロセス理論を含むプログラム理論は、社会プログラムが解決をめざす社会的問題と、解決すべきプログラムゴールを示すとともに、社会プログラムがどのようにその問題を解決に貢献するのか、プログラムの構成要素を示してその仕組みを理解しやすく多くの関係者に示すための社会プログラムの「設計図」である。このうちプロセス理論は、社会プログラムが解決をめざす社会的問題・プログラムゴールに対して、どのように対応しようとするのかについて、プログラムのサービス機能(サービス利用計画)と実施組織の仕組み(組織計画)を、論理的にかつ視覚的に分かりやすく示すことが求められている。
プログラム理論の解説文は、プログラムの実施に関わる実践家、プログラムの利用者・家族、そしてプログラムの実施に関わる利害関係者に対して、このプログラムに対する理解を促す目的で作成される。具体的には、次のものが考慮される。
①プログラム実施に関わる実践家に対するプログラム実施マニュアル
②プログラム出資者を含む利害関係者にプログラムに対する理解を促すパンフレット
③プログラム利用者・家族にプログラムに対する理解を促すパンフレット

それぞれの関係者に対して、プログラムの仕組みが良く理解できるように提示することが必要である。①~③に盛り込む内容はそれぞれ異なるが、プログラムのサービス機能とサービス組織に関わるプロセス理論は重要な要素であり、プロセス理論を含むプログラム理論が適切に理解できるように説明する解説文は重要な位置づけを持つ。

2. プログラム実施マニュアルにおけるプロセス理論サービス利用計画の解説文

CD-TEPプログラム評価法は、実践家に評価活動に参画して頂き、効果的プログラムモデルの形成をめざしている。このため、プログラムに関わる実践家に対して、効果的なプログラムモデルの骨組みととなるプログラム理論を分かりやすく、かつ論理的に伝えることは非常に重要である。
効果的なプログラムモデルの第1次プログラム理論(21-2-31)が作成された段階で、プログラムに関わる実践家のためにプログラム実施マニュアル(22-2-31)を作成する。その中には、主要な文書としてプログラム理論プロセス理論、およびその内容を適切に伝えるための解説文を掲載する。
プロセス理論サービス利用計画は、通常、サービス利用計画図(サービス利用計画チャート)として示される。サービス利用計画の解説文は、プログラムに関わる実践家に対して、このサービス利用計画チャートにおいて示されている、以下の内容を分かりやすく、かつ論理的に記述する。

  1. プログラムが対象とする標的集団(対象層)に対して、どのようにサービスを届けようとするのか、プログラム導入に当たり利用者にどのような積極的な働きかけをするのか
  2. どのようにサービス利用者の希望と個別ニーズに沿った支援を提供しようとするのか
  3. プログラムが解決をめざす社会的問題・プログラムゴールの解決のために、どのような創意、工夫をこらした取り組みを行うのか
  4. どのようなプログラム実施組織が連携しながらプログラムに取り組むのか
  5. 利用者本人を身近に支援する環境(身近な支援環境)に対する支援機能を、どのようにプログラムの中に盛り込んで支援するのか
  6. プログラムはどのような手順で進み、どのように終結・フォローアップの段階に至るか
  7. これらプログラムが、解決をめざす社会的問題・プログラムゴールの解決のために有効に機能する根拠
  8. これらプログラムが社会的に受け入れられる背景の説明。実践現場の創意・工夫、評価調査結果に基づく科学的根拠(エビデンス)、社会的合意形成の内容など。

第1次プログラム理論プロセス理論に基づいて作成するプログラム実施マニュアルの内容は、必要に応じて、効果的プログラムモデル実施研修会を開催して説明し、実践家からフィードバックを受ける。特に、プロセス理論サービス利用計画は実践家の多くの創意・工夫が発揮される領域である。多くのインプットが期待される。
第2次プログラム理論インパクト理論、第3次プログラム理論インパクト理論のそれぞれに対応させて、プログラム実施マニュアルを作成する。その中には、もちろんプロセス理論サービス計画チャート、およびプロセス理論サービス利用計画解説文が含まれる。それらの内容は、第1次理論、第2次理論の経験に基づいて、実践家にとってより理解しやすく、論理的なものに改訂する。

3. 利用者・利害関係に向けパンフレットにおけるサービス利用計画の解説文

CD-TEPプログラム評価法は、実践家に評価活動に参画して頂くとともに、プログラム利用者にも参加して頂き、効果的なプログラムモデルを形成することをめざしている。同時に、社会におけるさまざまな利害関係者の理解を得ながら、より効果的なプログラムを形成することを期待している。
プログラム理論サービス利用計画は、社会プログラムがどのようなサービスを提供して、改善すべき社会的問題を解決し、プログラムゴールを達成するのかを、論理的に、かつ視覚的に分かりやすく示すものである。プログラム利用者にも、プログラムに関わるさまざまな利害関係者にも、そのプログラムを理解して頂くために不可欠な要素である。サービス利用計画を適切に理解できるように説明する解説文は重要な位置づけを持っている。
プログラム利用者やプログラムに関わる利害関係者に、プログラム内容を伝えるためのパンフレットに盛り込まれるサービス利用計画解説文は、プログラム実践家に対するプログラム実施マニュアルに盛り込まれているサービス利用計画解説文と比較して簡便なものになる。しかし、プログラム実施マニュアルに含まれる要素はある程度カバーする必要があるであろう。
特に以下の項目は、特に十分に説明する必要がある。

  1. プログラムが対象とする標的集団(対象層)に対して、どのようにサービスを届けようとするのか
  2. どのようにサービス利用者の希望と個別ニーズに沿った支援を提供しようとするのか
  3. プログラムが解決をめざす社会的問題・プログラムゴールの解決のために、どのような創意、工夫をこらした取り組みを行うのか
  4. どのようなプログラム実施組織が連携しながらプログラムに取り組むのか
  5. 利用者本人を身近に支援する環境(身近な支援環境)に対する支援機能を、どのようにプログラムの中に盛り込んで支援するのか
  6. プログラムはどのような手順で進み、どのように終結・フォローアップの段階に至るか
  7. これらプログラムが社会的に受け入れられる背景の説明。実践現場の創意・工夫、評価調査結果に基づく科学的根拠(エビデンス)、社会的合意形成の内容など。