Ⅲ1. 「効果的プログラムモデルの実施・普及、制度化」フェーズ
科学的根拠に基づく実践(EBP)プログラムなど、効果的プログラムモデルが構築されて、科学的根拠が蓄積し、その有効性が関係者の間で共通認識になっても、その実施・普及が容易に進まないことが知られている。多くのEBPプログラムは、一般的には20~30年など長期間が経過しても、ニーズのあるごく僅かの人たちにしか適用されない現状があることが知られている。
翻って医学領域をみると、薬物療法など身体療法は、それが優れたものであり、国などの承認が得られていれば、ごく短期間のうちに普及が進む。多くの場合、薬物療法などは、医師個人の判断で使用して普及ができる。また薬剤は大量生産が可能である。しかしEBPなど効果的な実践プログラムは、多くの場合病院や地域ケア体制、財政などのシステムを変更し、多数のスタッフや関係者の意識を変え、さらには多職種のスタッフが実施の技術を身に付けなければ取り組めない。これらのことが、EBPなど効果的なプログラムを実施・普及する上で大きな制約条件になっている。
これに対して、効果的プログラムモデルを、多くの地域や実践現場で使用可能な標準モデル・普及モデルに取りまとめ、そのモデルを中核にして、プログラム導入を考慮する事業所が、事業所組織の内外で容易に導入・実施・普及を進めることができる用具類(ツールキット)を開発し、さらには効果的プログラムモデルを制度化して、より優れた制度モデルに位置づけることが求められている。
「効果的プログラムモデルの実施・普及、制度化」の評価フェーズでは、前評価ステージ(Ⅱ. 効果的プログラムモデルへの発展評価ステージ)で構築された効果的プログラムを、ニーズをもつ多くの人たちが利用できるように、プログラムの実施・普及を進め、制度化することを目ざした評価アプローチを行う。具体的には、「Ⅲ1-1 効果的プログラムモデルの実践現場への移転、実施・普及モデルの作成」、「Ⅲ1-2 効果的プログラムモデルの実施・普及ツールキットの作成」、「Ⅲ1-3 効果的プログラムモデルの制度化、制度モデルの作成」という3つの課題プロセスに取り組む。
図Ⅲ1-1-0には、「効果的プログラムモデルの実施・普及、制度化」の評価フェーズの概要を示した。
「Ⅲ1-1 効果的プログラムモデルの実践現場への移転、実施・普及モデルの作成」では、効果的プログラムモデルの実践現場への移転の方法を検討し、多くの地域や実践現場で使用可能な標準的な実施・普及モデルを構築することを課題とし、「Ⅲ1-2 効果的プログラムモデルの実施・普及ツールキットの作成」では、実施・普及モデルに基づいて、実施・普及を進めるツールキットを構築することに取り組む。さらに、「Ⅲ1-3 効果的プログラムモデルの制度化、制度モデルの作成」では、効果的プログラムモデルを制度化して、実施・普及を推進する優れた制度モデルを構築することを課題にする。
★効果的プログラムモデルを実社会の移行・定着する方法
★実践現場との摺り合わせ、随時のサポート、コンサルテーション、そのプロセスの中で知識の蓄積が問われる
★実施研究、トランスレーショナル研究
★「共通基盤」は、ツールキット(実施マニュアル)に反映。
・理論:モデルの更新
・エビデンス:フィデリティ、効果的援助要素とアウトカム
・実践:実践からの随時のフィードバック