4. CD-TEP評価アプローチ法実践ガイドの構成と枠組み

パートBの最後に、CD-TEP法の中核であるパートC「CD-TEP評価アプローチ法実践ガイド」の構成と枠組みについて示す。
まず、「CD-TEP評価アプローチ法実践ガイド」の特徴を整理すると、以下のとおりである。

  1. 新しく導入された実践プログラムあるいは必ずしも効果が上がっていない既存の実践プログラムを、効果的で有用性の高いプログラムモデルに発展させる評価アプローチ法の集約であること
  2. 評価を進めるに当り、プログラム理論(T)と科学的根拠(エビデンス)(E)の活用、実践現場の創意・工夫のインプット(P)の継続的反映(円環的対話)を重視すること
  3. 評価を進めるために、パートBで示した6つの共通基盤方式と、7つのプログラム現場との相互交流、エビデンス収集の方法があること
  4. 実践プログラムの開発段階に応じて、(Ⅰ)プログラム開発評価・評価基盤形成ステージ、(Ⅱ)効果的プログラムモデルへの発展評価ステージ、(Ⅲ)効果的モデルの実施・普及・更新評価ステージという、3ステージごとの対応を示していること
  5. 上記の3ステージごとに、プログラム評価が直面する課題を「課題プロセス」として整理し、その課題解決・課題達成のために必要な情報・資料(「インプット」)、課題の検討方法(「検討方法」)、課題に対する対応方法の提示(「アウトプット」)をそれぞれ用意していること
  6. 「課題プロセス」間の関連をフローチャートで示したこと
  7. 「アプローチ法実践ガイド」の作成に当たって、9つの福祉実践プログラムを対象に行った評価アプローチの経験から蓄積された知識・経験・成果が集約されていること
  8. 実践現場における評価経験からのフィードバックを得るためにウェブ公開し、随時、フィードバックを受けて更新できるように配慮したこと

以上の枠組み、特に実践ガイドの表示方法については、プロジェクトマネジメント領域におけるPMBOK (Project Management Body Of Knowledge) というプロジェクトマネジメントの知識体系を参考にした(特に構成に関わる5,6,7)(プロジェクトマネジメント協会、2008)。CD-TEP評価アプローチ法実践ガイドが、将来的に実践プログラム開発と改善のための評価アプローチとして、評価法の知識体系になれば望外の幸せである。

以下、パートA、パートBのこれまでの記述で触れていないことについて、整理して示す。

1) 実践プログラムの開発段階とCD-TEP(上記④対応)

実践プログラムの開発段階に応じて、さまざまな異なる種類の評価課題が発生する3ステージを改めて整理すると以下のとおりである。

  • Ⅰ. プログラム開発評価・評価基盤形成ステージ
  • Ⅱ. 効果的プログラムモデルへの発展評価ステージ
  • Ⅲ. 効果的モデルの実施・普及・更新評価ステージ

それぞれ第Ⅰステージには、以下の3課題(「課題プロセス」)。

  • Ⅰ1-1. ニーズ把握とプログラムゴール・標的集団の設定
  • Ⅰ2-1. 既存・試行プログラムの現状把握
  • Ⅰ2-2. プログラム評価可能性・再編可能性アセスメントの実施

第Ⅱステージには、以下の11課題(「課題プロセス」)。

  • Ⅱ1-1. プログラム理論の構築・再構築:インパクト理論
  • Ⅱ1-2. プログラム理論の構築・再構築:プロセス理論(サービス利用計画)
  • Ⅱ1-3. プログラム理論の構築・再構築:プロセス理論(組織計画)
  • Ⅱ2-1. 効果的援助要素リストの作成
  • Ⅱ2-2. 効果的プログラムモデルの実施マニュアルの作成
  • Ⅱ3-1. アウトカム評価尺度・指標の設定と活用計画
  • Ⅱ3-2. アウトカム評価調査の実施とその評価結果の活用
  • Ⅱ3-3. 効果的プログラムモデルのフィデリティ尺度作成と活用計画
  • Ⅱ3-4. フィデリティ評価調査の実施と評価結果の活用
  • Ⅱ3-5. アウトカム評価とフィデリティ評価・効果的援助要素の関連性の検証、評価結果の活用
  • Ⅱ4-1. 効果的プログラムモデルの構築

第Ⅲステージには、以下の4課題(「課題プロセス」)。

  • Ⅲ1-1 効果的プログラムモデルの実践現場への移転、実践的適合モデルの作成
  • Ⅲ1-2 効果的プログラムモデルの実施・普及モデル、実施ツールキットの作成
  • Ⅲ1-3 効果的プログラムモデルの制度化、制度モデルの作成
  • Ⅲ2-1 実践現場の創意・工夫と基盤にした効果的プログラムモデルの改訂・更新

これらのステージの適用対象になる実践プログラムは、以下のプログラムの開発・発展段階に基づくプログラム類型に整理することができる。

A型:新規開発プログラム(非EBP)を実施・普及可能な効果的プログラムモデルに発展・構築させる課題をもつ
B型:導入期の既存制度プログラム、試行的事業のプログラム(非EBP)を、効果的プログラムモデル(EBP)に発展・再構築する課題をもつ
C型:定着期・見直し期の既存制度プログラム(非EBP)を、効果的プログラムモデル(EBP)に転換・再構築する課題をもつ
D型:ベストプラクティス・EBPプログラムを、よりニーズに適合した効果的プログラムに再構築する課題をもつ。
評価ステージとプログラム開発・発展段階の関係を示したのが、表B-2である。

2) 課題プロセスと評価フェーズ(上記⑤⑥対応)

プログラム評価が直面する課題を「課題プロセス」としてまとめた。
CD-TEP評価アプローチ法では、第Ⅰステージ3課題、第Ⅱステージ11課題、第Ⅲステージ4ステージの計18課題が設定されている。
それぞれの課題プロセスは、課題解決・課題達成のために必要な情報・資料(「インプット」)、課題の検討方法(「検討方法」)、課題に対する対応方法の提示(「アウトプット」)ごとに整理して、対応すべき評価アプローチ法の知識・経験・成果を、「CD-TEP評価アプローチ法実践ガイド」において整理している。課題プロセスの「インプット」「検討方法」「アウトプット」の項目は図解している。
また、それぞれの「課題プロセス」は、時に「円環的」に相互に関連している。「課題プロセス」が処理を済ませて、次の「課題プロセス」に進み、最終的に大きな評価課題を解決する見取り図を、各課題プロセスごとに、あるいはパートDに示している。

「課題プロセス」がグループとして達成すべき課題を示したのが、「課題フェーズ」である。
特に、第Ⅱステージは、以下のとおり整理される。

  • Ⅱ1. プログラム理論の評価と構築・再構築フェーズ
  • Ⅱ2. 実践現場の創意・工夫、改善点の反映フェーズ
  • Ⅱ3. エビデンスにもとづく知識生成フェーズ
  • Ⅱ4. 「効果的プログラムモデルの構築」フェーズ

それぞれTEPの「円環的対話」を考慮した課題のまとまりになっている。

3) ウェブ公開とフィードバック(上記⑧対応)

実践現場における評価経験からのフィードバックを得るためにウェブ公開し、随時、フィードバックを受けて更新できるように配慮した。CD-TEP評価アプローチ法の知識体系は、高々研究期間4年間に行った9の福祉実践プログラムを対象に行った評価アプローチの経験から蓄積された知識・経験・成果である。より多くの評価アプローチの知識・経験・成果を踏まえて、より良い評価アプローチの知識体系ガイドに発展することを期待したい。
それぞれの「課題プロセス」項目等に、コメント欄が設定されている。コメント欄にご投稿頂ければ、できるだけそのご意見を反映して行きたいと考える。