CD-TEP評価アプローチ法を用いて、新しく導入された実践プログラム、あるいは効果が上がっていない既存の実践プログラムを、効果的で有用性の高いプログラムモデルに発展させるための具体的な方法は、パートC「CD-TEP評価アプローチ法実践ガイド」に提示してある。
このパートBでは、CD-TEP評価アプローチ法の共通基盤となり、パートC「CD-TEP評価アプローチ法実践ガイド」を進めて行く上で中軸となる6つの共通基盤となるの方法を示す。またCD-TEP評価アプローチ法はプログラム実践現場と多くの相互交流を持ちながら進める手法である。「CD-TEP評価アプローチ法実践ガイド」で繰り返し用いられる実践現場との相互交流方法を、事前に整理して提示する。最後に、「CD-TEP評価アプローチ法実践ガイドの構成と枠組み」を示した。
なお、これらの評価活動を進めるに当たって、評価研究に関わる実践家と評価研究者の役割が重要である。それぞれの役割分担を明確にするとともに、今後、評価研究者がプログラムの実践現場に入り、一定の実践的役割を果たすことが求められていることを付言しておきたい。
1) CD-TEP評価アプローチ法の共通基盤
CD-TEP評価アプローチ法の「円環的対話」を成立させる共通基盤として、次の6項目が定式化された。
①測定可能なプログラムゴールの設定と共有化の方法
②合意できるプログラム理論形成の方法
③効果的援助要素(効果的プログラム要素)の特定と共有化の方法
④チェックボックス方式による効果的援助要素の記述と測定方法
⑤効果的援助要素チェックボックスに基づく実施マニュアルの構築方法
⑥プログラムゴールとなるアウトカム指標と効果的援助要素の関連性の日常的な把握と実証の方法
これら6つの共通基盤となる方式を中核としながら、パートC「CD-TEP評価アプローチ法実践ガイド」には、評価を進めていくために必要なさまざまな実践的知識が盛り込まれている。
CD-TEPプログラム評価アプローチ法は、図A-1のように、プログラム理論(T)、科学的根拠(エビデンス)(E)、実践現場からのインプット(P)間において、円環的に相互作用するモデルを想定している。6方式のどれか一つが「理論」や「エビデンス」「実践」を構成したり、反映したりするものではないが、おおむね次のとおりにまとめることができよう。
a. 主にプログラム理論(T)に関わる共通基盤
プログラム理論については、直接的には、②合意できるプログラム理論形成の方法が該当する。
同時に、プログラム理論のインパクト理論との関係では、①測定可能なプログラムゴールの設定と共有化の方法、が重要である。
また、プロセス理論との関係では、③効果的援助要素の特定と共有化の方法、が強く関わる。
b. 主にエビデンス(E)に関わる共通基盤
科学的根拠(エビデンス)に関して、主要な課題は、効果をもたらすプログラムモデル、およびプログラムモデルを構成する効果的援助要素と、プログラムのアウトカム・インパクトとの関係性を適切に検証することが重要である。プログラムモデルや効果的援助要素の妥当性を、科学的に保証するとともに、より適切なプログラムモデルの構築や効果的援助要素の見直しに結び付く実証的な取り組みになる。
なお、プログラムアウトカム・インパクトの測定については、①測定可能なプログラムゴールの設定と共有化の方法が対応し、一方、効果をもたらすプログラムモデル・効果的援助要素については、③効果的援助要素の作成と共有化の方法、④チェックボックス方式による効果的援助要素の記述と測定方法、が対応する。
この両者(アウトカム・インパクトの測定と、プログラムモデル・効果的援助要素の把握・測定)を、実践レベルで検証するのが、⑥プログラムゴールとなるアウトカム指標と効果的援助要素の関連性の日常的な把握と実証の方法である。
c. 主に実践現場(P)に関わる共通基盤
実践現場からのインプットについては、6つの共通基盤方式すべてに関係する。
特に、「実践現場からのインプット」を欠くことができないのは、③効果的援助要素の作成と共有化の方法、④チェックボックス方式による効果的援助要素の記述と測定方法、⑤効果的援助要素チェックボックスに基づく実施マニュアルの構築方法、⑥プログラムゴールとなるアウトカム指標と効果的援助要素の関連性の日常的な把握と実証の方法、である。
2) プログラム実践現場との相互交流の方法
CD-TEPプログラム評価アプローチ法は、プログラム現場との密接な相互交流の中から、実践現場(P)の創意・工夫を共有化し、エビデンス(E)として蓄積させる。
プログラム現場との相互交流には、次の7つの方法を主に用いる。
①プログラム関係者・利害関係者からの聞き取り調査
②実践家・プログラム関係者、利用者とのフォーカスグループ面接、意見交換会(含、研修会)
③プログラム現場への踏査調査
④フィデリティ評価モニタリング調査の実施と意見交換
⑤効果評価調査の実施
⑥全国実情把握調査
⑦全国都道府県・市町村の既存制度モデル・試行的事業モデルの実施要綱調査、
福祉実践プログラムについて、これらの進め方には一定の共通方式がある。次のパートCで述べるCD-TEPプログラム評価アプローチ法を具体的に進める共通アプローチとして、本パートの後半に整理する。